小川洋子 著
最初に読んだのは、多分20年以上も前で、しかも息子の時の産休で家にいたときです。
農薬が皮にしみこんでいるグレープフルーツを、妊娠している姉に食べさせている妹のお話です。
小川洋子は、「博士の愛した数式」以来ブレイクしていますが、「妊娠カレンダー」をしばらく前に
読んだこと自体忘れていて、気づけば「世にも美しい数学の話」「薬指の標本」「博士の愛した数式」など
結構読んでいました。
読んだものはどれも「理系の特別教室の色とニオイ」がします。
「博士の・・・」が流行るちょっと前に、NHKのラジオ深夜便に小川洋子自身が出演していました。
そのときの話はたしか「素数」と「友愛数」でしたが、その内容に大変興味深く聴き入った記憶があります。
妊娠カレンダーは、グレープフルーツのジャムを毎日毎日その危険性を知りつつ姉のために作り続ける
という「行為」が、実に自然で、緻密で、残酷で。
読み手の気持ち一つで、妹の行為をいろいろな形に捉えることが出来る面白さを感じます。