たまたま観ていたテレビに、桜庭一樹が出演していて、
アイルランドはダブリンに赴いていました。
そこで紹介していた本が、ジェームス・ジョイスの『ダブりナーズ』。
ニューヨークに住んでいる人々を「ニューヨーカー」と呼ぶように、
ダブリンに住んでいる人たちをダブりナーズとあらわしています。
旧翻訳では「ダブリンの人々」でした。
このように都市名に接尾語をつけて「○○の人々」といえるのは、
世界的にみても、ニューヨーク、モントリオール、パリ、ロンドンくらいらしいです。
内容は短編が10篇ほどあって、20世紀初頭のダブリンの町に住む、中級から下級市民層が主役です。
例えば親しんでいた牧師さんが亡くなって、家に行って最後のお祈りをしたがっている少年の心理。
また、アル中の父を捨てて恋人とアメリカに渡る決意はするものの、船に乗ることができなかった女性のジレンマ。
友人の自慢話を疎んじながらも、結局は行動を共にしてしまう学生。結構そこいら中に転がっている内容なのです。
あくまで日常にこだわっているのか、物語は特に変哲もなく淡々としているし、
結びも何気なく完結するのですが、異国の異世代の事なのに
やはり人間ってみな同じだなと、特に根拠もなく納得してしまいます。